魔界転生

久しぶりの読書の話題。
会社のおじさまが「どう?読む?」と奨めて&貸してくれたので、読みました。
上下巻で構成されている、1000ページを超える、山田風太郎の長編です。
時代は江戸時代初期。島原の乱が、ほんの20年ほど昔、という時代です。
悪者が、キリシタンの魔術書と日本の忍法を熔合して編み出した「魔界転生」という、まか不思議な術を使って、歴史に名だたる7名の剣豪達を魔物として生き返らせ、紀伊の殿様を傀儡に、幕府転覆を狙います。
そして、ヒーロー・柳生十兵衛との死闘が繰り広げられ…、というストーリーです。

魔界転生」と言えば、確か、角川映画で話題になったけど、なんだかつまらなそうで、映画館に見に行くようなことはしませんでした。(その頃は、親がつきあってくれなかった、という事情もありますが。)
その後、忘れた頃に、TVで再放送を見かけたところ、天草四郎役の沢田研二が、洞窟の中で、目を怪しく(SFXで)光らせながら、「魔界転生〜!」と叫んでいる場面でした。
思わず、「くだらねぇ。」とつぶやいたのは、間違った感想ではないと思います。

そんな記憶があったので、当初、原作を読むのはいかがなものかと思いましたが、ページを開きもせずにおじさまにお返しするのは、たいそう失礼なことなので、少しひもといてみました。
そしたら、グイグイ読ませるんですね。
山田風太郎さんの文章、すごい吸引力です。翻訳物にはありない超絶技巧の日本語です。
剣術用語もわからないながら、迫力は十分に伝わります。
結局、最後まで読んでしまいました。
でも、時間もかかりました。 このくらいのボリュームなら、特に時間を取って読まなくても、2週間で読み切れるはずなのに、足かけ1ヶ月もかかってしまいました。
なぜなら、戦闘シーンの流血沙汰が、とてもとても恐ろしかったからです。
悪者も柳生十兵衛も、普通に、人の首や手足や胴体を切断するのです。1人なぎ倒すのは当たり前、横に並んだ4人を一太刀の元、とか、両手に持った刀を十時に回し、2人いっぺんに、というシーンもあり、それが、いちいち痛いので、休み休みでないと、とても続きません。

でも、殺さなければ殺される、という切迫した時代が舞台なので、仕方がないと思います。
戦闘とかチャンバラって、かっこいいけど、実は痛いものなんだぁ。

思えば、江戸時代までは、そんな武器と技を身につけた人が、街を普通に歩いていて「切り捨て御免」などと言ってた世の中だったわけですから、恐ろしいものです。
けど、それはそれ。物語は面白かったです。

魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖(6) (講談社文庫)   魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)