靴と足の戦い

行きと帰りの通勤時、不愉快な気分が蔓延。
なぜなら、買ったばかりの靴があいかわらず足に合ってくれなかったから。
「あいかわらず」というのには、ワケがあります。 
この靴、靴とサンダルが合わさったようなデザインをしていて見かけはかわいいんだけど、靴というものは、得てして「見かけの良さと履き心地や機能性はイコールではない」、という定理定説があるものです。 この靴もそれに違わず、つま先からかかとまで、徹頭徹尾(靴に"徹頭徹尾"はヘンかもしれないので、親指のつま先からくるぶしまで、といったところでしょうか)、 何から何まで足に合わなかったのです。
つま先はキツキツだし、かかとはヘンにこすれて玄関を出てから20歩ほど歩いた時点で靴ズレをほのめかすし、親指の脇の骨がクリクリしているところは、頭の芯にキリキリ来るような傷みで締め付けられるし、マジな話、自分の住んでいる階のエレベータホールまでたどり着けなかったくらいです。
しかし、買ったばかりの靴。 
通販で買ってしまったとはいえ、まだ新品の靴に見切りをつけるには早すぎます。 
そこで改造大作戦。
まずは、かかとのところを、グイグイ押して潰して柔らかくして第一段階終了。 次に、当たりのキツイところを広げるべく、ペットボトルを潰したものを、該当箇所にぎゅうぎゅう押し込みます。 耳をそばだてると、ペットボトルと靴の皮のそれぞれが、「ギュゥ〜」といいあっている音が聞こえています。 それを耳にしながら、「よしよし、ペットボトル君、がんばれよ」などと、一方的な応援をしつつ、そばを離れ、放置すること2週間。
そして、できあがったのは原形をとどめない、しかし、当たりの悪いところがなくなった靴です。 「靴は、見かけの良さと履きやすさがトレードオフ」というのは真実だと合点。 (っていうか、他の人がこんなことを言っているのは聞いたことはありませんが。)
でも、いいんです。そんなのはじめから承知の上だったんですから。
しかし、今日、不機嫌だったのは、そこまで妥協してやったのに靴は歩み寄ってくれなかったからなんです。
ええ、おかげさまで、履き心地はよくなりましたとも。 ヘンに当たって痛いところもなくなりましたとも。
でもね、かかとを潰したのが災いして、歩くたびに、足から飛び出ようとするようになってしまったんです。 かかとから着地するように歩かないと、脱げそうになるんです。 
そりゃ、こんな持ち主から逃げ出したい気持ちはわからないでもないですがね。 
お陰様で、行きと帰りの通勤路、靴が逃げないように歩くのに、たいそう苦労致しましたとも。 かかと着地歩行って不格好だわ、腰に響くわ、疲れるわで、踏んだり蹴ったり。
何より怖かったのは、今この瞬間、大地震や火事がおきたら逃げられない、ってことでした。 現実的ではない恐怖かも知れませんが、こういう事態に陥ると、フィクションがノンフィクションに思えてくるのが人間の心理ってもの。 なので、ずっとずっと不安でした。 今考えると、バッカみたいですが。
で、教訓。
これからは、靴は見かけだけではなく、いざというときにサバイバルできるかどうか、っていうことも気にしながら選ぶこと。 今日はzabbonが、見かけだけから卒業し、実用性という新たな価値観と共に新しい人生を、 (あの靴ではなく、他の靴で) 歩み出した記念碑的1日と言えよう。
(*「実用性」なら、どちらかと言えば、zabbonの十八番なんじゃないかという気もしなくもありませんが…)