クチナシの鉢とその住人

4月の末に、道ばたのお花屋さんで見かけたクチナシの鉢に一目惚れ。 いきいきツヤツヤした葉っぱの色の濃さがきれい。 蕾もたくさんついていて、すばらしい6月を予感させるし。
で、早速、連れて帰って、少し大きめの植木鉢に植え替えてあげて、乾燥を嫌うというので、水苔を湿らして敷いてあげたり、と甲斐甲斐しく世話をしてあげました。
そして、期待通り、6月のはじめ頃から、ポコポコと白い八重のタイプのお花が咲き始め、しばらくの間、ずっといい匂いをベランダ中に漂わせてくれました。 そして、開花ラッシュも一段落し、少しばかり緑が目立ち始めたかなぁ…という時に、異変発見!
葉っぱが、葉っぱの形をしていないのです。 ところどころ、ギザギザに。 茎だけになってしまったところもあります。 そして、植木鉢の周りを見ると、黒々した細かいものがボツボツと落ちてます。 
もしやこれは…! もっと注意深く葉っぱの陰を見てみると…、わぁぁ、いたいた、いたいた。シャクトリムシ系の芋虫たちが4〜5匹。 彼らは皆、まぁ、なんと鮮やかで透明感のある緑色をしているのでしょう。かわいい…! 早速、家族を呼んで、ここで起こった事件を紹介したら、ものすごく喜んでいましたが、でも、このまま、この芋虫たちを養ったら、大切なクチナシ丸坊主になってしまう…。でも、芋虫はかわいいし。 でも、やっぱりクチナシの方が大事だよね…、さよならしないとクチナシが死んじゃうよね…と、さんざん悩んだ揚げ句、苦渋の合意にこぎ着け、指でピンピンピン!としてしまいました。 ごめんね。本当にごめんね。
それにしても、この芋虫達は、一体誰で、いつ、どうやってやって来たんだろう。 そした、わかりました。 彼らは緑色のスズメ蛾のお子様方だったのです。 彼らはクチナシを食べて成長するんだそうです。 
思えば、10日ほど前、緑色のスズメ蛾がベランダに遊びに来てましたっけ。 もともと、スズメ蛾は好きなんですけど、うちのベランダにやって来たことはなかったので、「珍しいお客さんだね〜。いいこだね。いらっしゃい〜。」なんて歓迎しましたっけ。 そしたら、そのスズメ蛾、家の中に入ってきて、そこらをぶうんぶん、と飛び回りました。 なので、「外の方が気持ちがいいから、出て行った方がいいんじゃない?」と話しかけたら、出て行きました。
今思えば、そのスズメ蛾は、クチナシの葉っぱに卵を産み付けた後、「どうぞ、うちの子をよろしくお願いします。」と、挨拶に来たにちがいありません。 なのに、zabbon達と来たら…! 
そんな悔恨の涙に暮れていたところ、なんと、生き残った1匹がたくましくなった姿を現したのです。 最初に見つけたのは家族でした。 家に帰ってきたzabbonに、おそるおそる「ご相談なんですけど…。生き残った、かなり大きいのが1匹いるんだけど、育てませんか?」と、もちかけたのです。
見れば、食欲旺盛。 そういえば、クチナシの葉っぱも、前に比べて、茎だけになったのが増えてます。 しかも、まだまだ大きくなりそうです。 
でも、この芋虫のお母上殿から「よろしくお願い致します」と挨拶を受けたことを思い出してしまった今となっては、殺生する気にもなれず、かくして、この芋虫は、我が家の一員として大切に迎えられることになったのです。
そして、この写真は、半分坊主になったクチナシの鉢と、その枝に隠れたスズメ蛾の芋虫の合同写真です。保護色なのでわかりにくいですけど。