帰宅困難者 2011年秋の陣

おとといは暴風雨、昨日はピーカン晴れ→にわかにかき曇るかのごとくの大雨。こんな風にころころ変わるのが、秋の空であり女心だと、古くから人はいいますが、こういう心根を持つ女の人を嫁さんにしたら、人生どうにかなってしまうので、結婚相手を決める時は、注意が必要です。
それにしても、台風15号、またの名を「ロウキー」は、関東に来てもヘタレない、希有であっぱれな台風でした。ロウキーとは「男性の名前」という意味で、米国が名付け親なんだそうです。この台風、「非常に強い」スケールを持ち、それを維持したまま東海・関東地域に上陸するのは、1986年以来だったんだとか。まさに、名は体を表した台風でした。
身の危険を感じ始めたのは、16時すぎてからのこと。窓に打ち付ける雨と風の音が尋常ではありません。ものすごく怖いし、電車が止まるのも時間の問題、と不安と緊張で仕事に手が全くつかなくなったところに、帰っていいよと言ってくれたので、脱兎のごとく、職場を後にしました。
駅に着くと、神奈川方面の電車については、あっちの路線は停止し、こっちの路線はなかなか来ない電車を待つ人々の黒山、のまさに危険信号が点滅している状態。運行停止まであと15分あるかどうか、といったところ。反対方面に向かう電車はまだ動いていたので、いつもと路線を変えて、帰り道を急ぎますが、案の定、神奈川方面の路線は、直後、停止してしまったので、こちらもうかうかしてられません。
乗り継ぎ駅に着いたら、駅のアナウンスが「次の電車は、隣の駅を出たところです。大変混雑しております。」というので、混んでて乗れなかったら、この前みたいに歩いちゃおうかなぁ…と思ったところ、「ただ今、地上では、風速30メートルの危険な状態です。」とのこと。くわばらくわばら…、歩いて帰るだなんて、とんでもないことでございまする。
「もはやこれまで。ここで缶詰でござる。」と、立派な武将もののふらしく観念したところに、電車が神々しく光り輝きながら滑り込んできて、しかも、比較的空いている車両だったので、乗り込むことができました。これで家に帰れる!
有り難くも自宅最寄りの駅に着き、地上に続く階段を登っていくと、人の流れが急にスローモーになり、前に進めなくなりました。
外の暴風雨のあまりの凄まじさにたじろぐ人々が、入り口付近で立ち往生しているのです。
反対に、その間を縫って、降りてくる人達もたくさんいましたが、一様にずぶ濡れの様子に絶句。でも、外に出ないと帰れないので、エイヤっと傘を広げ、飛び出たとたんに、強風にあおられ傘の骨が見事に曲がってしまいました。ほぼ新品の長傘だったのに…涙。
命からがら、笑いながら(こういう時は笑いが自ずと出てくるものです)、自宅マンションの前まで来たところ、長さ3メートルくらいの大きな枝が、歩道に転がっていてびっくり。すかさず風速30メートルの中、災害の状況を写メールで記録。前回、帰宅困難者になった時、稀なる隅田川のコロロッカに遭遇したのに、家に帰るのに必死で撮影し損なったことを未だ後悔、その轍を踏まないためにも決死の撮影に及んだわけです。
こうして無事に家にたどり着くことができましたが、鳩のお嬢様も台風を迎える準備をしていました。聞くところによると、台風がひどくなる前、窓の外で鳩鳴きでトゥルットゥ・ルットゥと家族を呼びやり、エサをおかわりして食べていったそうです。うちの大事な鳩のお嬢様も、ちゃんと腹ごしらえをして、台風ロウキーに臨んだと聞き、誰よりもホッとしたのはzabbonに他なりませんでした。その甲斐あって、翌朝、鳩のお嬢様は、その無事な姿を現してくれました。