「石鹸安全信仰の幻」を読む

石鹸安全信仰の幻 (文春新書)

石鹸安全信仰の幻 (文春新書)

今後の参考のために、ということで「石鹸安全信仰の幻」著:大矢 勝)を読みました。
読書のジャンルに入れてもよかったんだけど、やっぱ、手作り石けんの技術力向上のための勉強だったので、こっちにしました。
この本、理数系全般が苦手な、あるいは「脂肪酸ナトリウム」という基本的キーワードにすらアレルギー反応を起こしていたzabbonにとっては、拷問のような読書でした。でも、黄色いアンダーラインを引きながら、頑張って最後まで読みました。
おかげさまで、謎の物体、「ミリスチン酸」なるものが、ヤシ油やパーム油に含まれている炭素数12の飽和脂肪酸であることを知りました。これを入れると泡立ちが良くなると聞いています。
また、石鹸が必ずしも、自然や人間にとってパーフェクトに良いものではなく、こんな長所と短所があるとありました。
<長所>魚毒性が少ない、生分解性が高い、添加物を比較的少なくしても高い洗浄力が得られるので、アレルギー発症の可能性を低くできる。
 <短所>原料油脂の消費量が多い(←最大の欠点としています)、排水中での有機物汚染付加が大きい、溶けにくい、金属セッケンを作る

もちろん、石鹸だけではなく、LASとかAOSなどという合成洗剤の基礎知識もたくさん紹介されていましたし、それぞれの問題点について、環境問題にはLCAの観点から、そして、人体に及ぼす危険性については、リスク評価の観点から比較し、論じられていました。
そして、結論としては、「石鹸も合成洗剤も全て含めて、完璧な洗剤はない。どれも長所と短所があり、それぞれの環境に応じて選んで使うべき」とありました。(それに加えて、この本は「石鹸推進派」に一石を投じる、というスタンスで書かれているので、推進派の「合成洗剤は悪である。石鹸を使うべきです。」という主張への疑問や批判も色濃く述べられていました。)

でも、石けんが「好き」で使っている(あるいは、zabbonのように作っている)人は、使い続けましょう、ともありました。要は、偏った知識に基づいた、偏った買い方・使い方をしないように、と言っているのです。科学的知識と論理的思考で判断できる消費者を目指しましょう、と訴えているのです。
もとより、石けん作りは楽しくてやっている単なる趣味ですし、その一方で、日々の生活の中では、合成洗剤はありがたく普通に使っています。
なので、好きでやっている石けん作りを肯定してもらってよかったですし、それと併せて、石けんの客観的評価を知ることができたのも、よかったと思います。
それにしても、この一週間、つくづく苦痛に満ちた読書タイムだったなぁ、と思います。